自治体の外郭団体が公益認定されない!?
2007年11月8日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
主席研究員 福島 達也

 

自治体の外郭団体である公益法人もたくさんあるのだが、その外郭団体の公益認定に黄色信号が灯っている。
もちろん、外郭団体であるとか、行政委託事業であるという理由で、公益事業と認められないわけではない。
もし、事業のすべてを委託に頼る団体が、それだけで公益性を否定されたら、外郭団体の多くが非公益団体(一般法人)ということになってしまう。よって、それが原因ではない。
ではいったい何が原因で、黄色信号なのか。

それは、役員構成である。
公益法人認定法の第5条第11号に、他の同一の団体の理事や使用人が、その団体の理事の総数の3分の1を超えてはいけないという条文がある。それを補完する政府令が今回示されたわけであるが、その公益法人認定法の施行令の第5条に次の文言がある。
「次に掲げる団体においてその職員である者」
そして、その団体には「国の機関」「地方公共団体」「独立行政法人」・・・・があるのだ。
つまり、特定の役所の公務員等が、法人の理事や監事の3分の1を超えている団体は、その行政庁にコントロールされる恐れがあるので、そういう団体の公益性は認めないということなのだ。
多くの外郭団体は、その役員の大半を自治体の市長や部長などにしていることが多い。
そうなると、公益認定されないということが今回示されたのである。

ここでわかったことは、特定の自治体にコントロールされる団体には公益性がないということだ。
これについて内閣府では、活動そのものを否定するのではなく、コントロールや支配を受けることは「その団体の利益に基づいて運営がなされることを回避するためのものであり、その要請は団体によって異なるものではない。」と断言している。
つまり、一般企業も自治体も、一切特例は設けずに同じように判断するということなのだ。
不思議なのは、「国や地方公共団体の利益とは、公益ではないのか」ということだ。
行政こそまさに公益団体そのものだと思っていたのだが、自らそうでもないということを示した格好となった。
というよりも、一自治体にコントロールされることだけがいけないということなのであろう。
確かに、いくつかの自治体の部長などが理事になっている「広域的な外郭団体」の場合は、特に問題にならないことからすると、やはり、「公益性」とは、まさに「広域性」なのかもしれない。
いっそのこと、「広益法人」と変えたほうがよいかもしれない。

ただ、面白いことに、かつてNPO法人の法的解釈の中では、一自治体の範囲で公益活動をする団体の場合、不特定多数の利益に値するという判断をしているのも同じ内閣府だ。
そのあたりが多少矛盾するような気がする・・・。

いずれのせよ、この施行令によって、多くの外郭団体を抱える自治体はかなり慌てていることであろう。
新制度では、公益認定を受けて「公益法人」になるのか、認可を受けて「一般法人」になるのかが、現行の公益法人の最大の関心事だろう。役員を引き上げて「公益法人」を選択するのは、補助金や委託などの関係から難しい。
かといって、役員そのままで「一般法人」を選択するのも、補助金や委託を一般の会社と変わらない「一般法人」に出すということと等しいので、議会や市民の声が怖い・・・。
「二兎を追うものは一兎をも得ず」ということで、ますます悩んでいるのではないだろうか。
「今の役員構成で、公益認定を取れないものか」という切実なる声が聞こえてきそうである・・・。


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